受け入れ後の対応

弊社では、長年罪を犯した人も含めて障がいのある人を利用者として受け入れてきました。そのため、刑務所や少年院にいた人罪に問われた人の受け入れようとする事業所から、こういう時どうしたらいいのか相談されることが多くあります。

ここでは、よくいただく質問や相談と、弊社での対応例を紹介します。

紹介する対応例は、「弊社ではこうしている」という参考例です。必ずしもこうしなければいけない、こうすれば必ずうまくいくという訳ではありません。本人の障がい特性、事業所の方針や実情などにより他の対応をした方が良いこともあるでしょう。

個人情報の扱い

書類やデータの画像と、パソコンの情報漏洩の画像

罪に問われた過去がある人とは言え、刑務所や少年院を出た後はすでに罪を償っています。過去に刑務所にいた、どんな罪を犯したか、何回刑務所に入ったかという情報は、繊細な扱いをする必要のある個人情報です。

弊社では、他の利用者にもスタッフにも一切問われた罪に関する個人情報を伝えていません。面談で直接会った担当(弊社の場合私石野英司)だけ知っている状態で受け入れます。他のスタッフには、受け入れの時期がいつ頃になるか程度の必要な情報のみを伝えます。

本人に、「あなたのしてきたことを限られたスタッフに伝えていいか」という確認は一応取りますが、了承が得られない限り、一切伝えないようにしています。

ただ、こちらが黙っていても、本人が周囲に「刑務所にいたことがある」「こんなことして捕まった」と言って回ることが多くあります。結果的に、周囲が知ることにはなります。本人が自分の口で伝えたことですので仕方がないですが、情報を知っている支援者が必要のない個人情報を本人の了承を得ずに伝えることは弊社ではしていません。

地域の理解を得ることの難しさ

弊社では、半世紀以上同じ地域で、罪に問われた人も含めた障がいのある人の受け入れを続けています。そのため、地域の人も「あそこには、大きな声出す人がよく通ってる」「日中にパトカーが止まっていることがある」ということをよく知っています。

長年、地域との交流があるため、おかげさまで地域の人たちからも理解を得られているという側面があります。

パトカーと警察官の画像

しかし、全く縁もゆかりもない新しい場所で事業を立ち上げ、そこにもとから住んでいた人に理解を求めるのは極めて難しいという現実があります。特に、性犯罪で刑務所にいた人については、地域の人が不安に思うのも当然です。

何かのきっかけで魔が差してまた再犯してしまうことも起こり得るので、「私たちがついているので絶対に再犯させません」と約束することは不誠実ですし現実的ではありません。

日頃から地域と交流して、信頼関係を作ることが第一歩です。

「罪に問われた人を信じてください」「偏見をなくしてください」と地域の人たちを変える方向で訴えるよりも、支援する私たちが行動で示して、この人たち(支援者)は信用できる人だと地域の人たちに思ってもらえるよう、日々交流を続けることが、地道ではありますが大切なことです。

相談しているイメージの画像と、弁護士の画像

そして、一つの事業所や一人の支援者で抱え込まずに、何か不安なことや解決が難しい問題が生じた際には、地域生活定着支援センターや社会福祉協議会、保護司さん、弁護士さんなどに相談して助言を得ることで、困難な状況を乗り越えやすくなります。

利用者がお店などで暴れた、盗んだ時の対応

注意して見守っていても、一人で行動している時に、地域のお店で暴れることや、お店の商品を勝手に持っていこうとしてトラブルになることがあります。

その場合、弊社では情報が入ったらすぐにお店に駆けつけるようにします。
自分の立場を明かした上で、「この人はコミュニケーションを取ることが難しい」など、その人の特性について説明します。まずは、利用者を守る姿勢で説明します。

そして、事情を聴き、経緯や事実関係を把握し、支援者の支援が及ばなかったことについて先方に謝罪します。
お店の人には、「繰り返すようであれば出入り禁止にしてください」と伝えます。

出入り禁止をすることが難しい場所であれば、支援者の連絡先を先方に伝えて
「この人がまた入ってきたら連絡してください
「大声で騒ぐようなら『代表の人に電話してこのことを話すけどいいですか?』と本人に言ってください」と、お店の人にお願いするようにしています。

利用者と支援者の信頼関係ができていれば、「自分のトラブルで世話になってる支援者を何度も呼びつけてしまうのは忍びない」と思うようになり、頭に血が上って気持ちが荒れた時でも理性が働きやすくなります。

コンビニからカレーパンが盗まれるイメージの画像

性的な逸脱行動をした時の対応

特定の状況になると、抱きつきなどの性的な逸脱行動をする人がいます。

一施設や支援者だけで抱え込まず、地域生活定着支援センターに連絡し、助言を得るようにします。

地域生活定着支援センターと連携しながら、どういう課題があって、どういう状況の時にリスクがあるのか、アセスメントを行います。

例えば、混雑した電車に乗っている時に起こりやすいのであれば、電車に乗らなくてもいいような生活をコーディネートするようにします。

若い女性を見た時に逸脱行動が繰り返されるようであれば、若い女性の支援者が少ない事業所につなげるようにします。

必要な場合は医療機関につなげます。

スタッフに暴言を投げかける時の対応

言葉や態度が荒い傾向にある人は、スタッフと衝突することがあります。

男性スタッフにはあまり強い態度に出ないけれど、グループホームの世話人さんなどで女性や弱い立場にある人には、えらそうな態度で暴言を投げかける人がいます。

「お前(スタッフ)が間違っている!」「謝れ!」などと荒い言葉で騒いだ時、弊社では、「あなたがそう思うのなら石野さん(責任者)に聞いてみたら?」

とスタッフに対応させるようにしています。

その際、スタッフには「ごめんね」などのその場しのぎの謝罪を一切しないように言っています。その場しのぎの謝罪は「世話人がもう謝ってるんだから世話人の方が悪い」

という本人の歪んだ捉え方を強化してしまうことがあるからです。

事情を聴いて、本人に謝罪する必要がある場合は代表が謝罪するようにしています。

スタッフには、利用者が荒れた時は分かりやすい言葉で落ち着かせるように言っています。

グループホームの画像と、ハートを持った人の画像

そして、時間と場所を改めて、「この前、世話人さんからこういうことがあったって聞いたけど本当?」と責任者の私が聞き、本人が事実関係を認めて、本人の方に非がある場合は「それはあかんな」と諭すようにしています。