罪を繰り返す障がい者の支援

罪に問われた障がい者の再犯防止と孤立の予防のための勉強会 第1回 第1部
講師:特定非営利活動法人 南大阪自立支援センター 石野 英司氏
司会:特定非営利活動法人 サポートグループほわほわの会 代表 宮﨑 充弘氏

丸紅基金 助成金事業
主催:特定非営利活動法人 南大阪自立支援センター
共催:相談支援たにまち
   わわのわ福祉アカデミア
   福祉のやさしい日本語協会
   一般社団法人ダイアロゴス

大阪府堺市で触法障がい者の支援を長年行っておられる、NPO法人南大阪自立支援センターの石野 英司氏を講師に迎え、支援活動を始めた経緯と実状、実際の事例、支援のポイントを解説していただきました。 今まで触法障がい者の支援に縁のなかった福祉関係者にとって、大変参考になる内容です。

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※読みやすいようにある程度調整しております。また、当日の会場、ZOOM参加者への案内などは割愛しております。

司会:宮﨑充弘氏

今回の勉強会は、丸紅基金助成事業として行われます。その助成金で皆様お手元にあります、「加害者にさせないためにできること~優しい日本語使った支援方法~」罪に問われた障害の人の受け入れガイドブックを作成しております。

罪に問われて障害のある人の受け入れ。当然、罪というのは皆さんにも様々な意見はあると思いますが、その罪に行くまでや、罪を行った後の、合理的配慮の部分について皆さんに考えていただき、その罪を償った後の受け入れといったところを、専門的な先生方に参加していただきながら、最新の情報と現状、課題を皆さんと学べたらと思っております。

初めは、NPO法人南大阪自立支援センター、石野英司さんにお話をいただきます。
では、石野さんよろしくお願いします。

講師:石野 英司氏
スライドを元に話を進められておりますので、スライドを確認しながら読まれることをお勧めいたします。

-事業所の紹介等-

皆さんこんにちは。今日は、雨の中、足元の悪い中、ご参加していただきましてありがとうございます。

まず、弊社の方は、大阪の堺市に事業所がございまして、南大阪自立支援センターと言います。

早速、お話しさせていただこうかと思います。

写真のように、弊社はクリーニング業、貸しおしぼり業とリネンサプライ業を営んでいまして、就労継続支援A型・B型を、開所しております。クリーニングの様子ですが、日夜こういう形で障害をお持ちの方が働いておられます。

時間の関係で、先々進めていこうかなと思います。
まず、簡単に概要ですが、ずっと読んでいくと時間がないんで、飛ばし飛ばしになるかと思います。

まずは、昭和39年 、貸しおしぼり業で堺市堺区で、事業所を立ち上げました。
弊社はもともと、昭和42年なんですが、障害者雇用を始めていまして、主に、重度障害者の方が、通所─通勤していまして、20数名の方が毎日おしぼりを洗濯して働いておりました。

平成21年に縁がありまして、障害福祉サービス事業を展開するようになりました。

平成23年にはNPO法人を立ち上げまして、放課後等デイサービス・A型(就労継続支援事業所)・B型 (就労継続支援事業所)の、3事業所から始まっております。

ちょっと飛ばしていこうかなと思います。

平成28年にソーシャルファームin横浜というところで、ソーシャルファームの事業としてお話をさせていただきました。障害者、罪を犯した障害者、外国人の雇用であったり、ひとり親であったり、ニート・引きこもり、そのような方を雇用して、ソーシャルファームとして展開しているという形でお話しさせていただきました。

令和元年になるんですが、累犯刑余者雇用っていうところで、就労(継続支援)A型で雇用をさせていただいて、触法障害者のためにグループホームを開設して、帰る所の調整で、環境調整、帰住調整っていうのがあるんですが、帰住のため、住むところを必要とする人のためにグループホームを併設しました。

令和2年には、高齢の累犯障害者の方が入りたいと、帰住の調整がありまして、女性の方だったんですが、そういうこともニーズがありまして、女性のグループホームを開設して、高齢の受刑者を福祉サービスの方で雇い入れました。

そこから令和3年には、A女子って書いてるんですが、特別調整で帰住調整と環境調整。

令和3年、宮川医療少年院に、短期に受け入れのため、保護観察所でテレビ面談を行い特別調整をし、砂川厚生福祉センター「つばさ」へ移行するための短期間なんですが、弊社のグループホームで、しっかりと生活を行うということで、受け入れをしました。この方に関しては、弊社の方で半年間ぐらい生活してたんですが、今「つばさ」の方で、一生懸命アンガーマネジメントを勉強したり、SSTであったり、そういった部分を、プログラムの中で勉強して、また3年後には、弊社の方で、帰ってきたら一緒に暮らそうね、っていうことで、今、訓練をしております。

―触法障がい者支援のきっかけ-

ここから、きっかけですが、なんで、この罪を犯した方達を、支援していこうかっていうところです。

そもそも、知り合いからの紹介で、東京のベネッセコーポレーション本社の中での会議があり参加しました。で、そこでは、触法障害者を救うっていう部分で、いろいろな多方面の先生方、法務省であったり、NHKであったり、そういった方たちが集まって触法障害者を救うっていうことで、勉強してる所に、参加したのが始めでした。
正直、その時はですね、すごい方ばっかりがいてまして、場違いなところに来てしまった、っていうところであったんですが、その会議に参加して、色々な罪を犯した方たちの、(罪を犯す)前のことであったり、後のことっていうのに共感しまして、そこから、弊社でできることはないのかなということで、少しずつ始めていきました。

罪の意識がなく、何で、罪を犯してしまうのかな? 勉強したところでは、障害特性だけではない、刑務所の方が暮らしやすいと。毎日ご飯が食べれる。で、24時間365日刑務所の中で、自由がないんですが、朝起きる時から就寝まで、時間しっかり決まった中で、タイムリーな生活をしていく。その(タイムリーな生活)上では、なんと居心地がいいという感じですかね。そういうことで、刑務所の方が安心して暮らせる。社会は暮らしにくいと。
で、この暮らしにくいというところは、なんでなんだろうなっていうところは、障害特性であったり、その人が生きてきた生育歴であったり、そういった部分が複雑化した内容が根っこになっているのかなと思っております。

その後、「獄窓記」(山本 譲司:著)、中島教授、慶應義塾の先生が書いてる本になるんですが、そういった本を読みながら、自分ではどんな風に関わっていけるのかということで、個人的に勉強していました。

ただ、罪を犯した、触法の障害者を受け入れるにあたって、(事業所内の)支援者は、話は別でした。事業所の中で、ここは(スライド内に)赤字で書いてるんですが、「なんか起きたらどうする?」「誰が責任取るの?」「地域の人たちはどう思うのか?」というような、受け(入れ)る前のことで、スタッフが思うのは当たり前でして。でも、私は、受け入れる前からリスクを考えるんではダメでしょと。だったら、受けていって、受けていく中で、その中でみんなで共感して、話し合えれば解決策があるんじゃないかと、言ったことを覚えています。

法務省の統計になるんですが、知的障害のある方の、IQ70未満の方で受刑者、いわゆる矯正施設の中では40%ぐらいの方が服役していると言われています。その中でも、出所後1年未満に(刑務所に)戻ってくる方が約6割ぐらいにも及んでいるそうです。出所しても帰るところがない方が4割以上で、出所後のケアが不十分な状況であります。

また、刑務所1年間あたりに本人にかかる、公費って言うんですかね、1人当たりだいたい300万円ぐらいがかかるようではあります。私は、この300万円に関しても、まず1人を受け入れれば、300万円、国の減税にはなるのかなということで、5人6人受ければ、それなりの金額が弊社の中で救えるんじゃないかなっていうような感じも描きながら受け入れたのを覚えております。ここでは、ちょっと資料が古いんですが、だいたい1人当たり300万かかります。

まあ、データがちょっと古いんで申し訳ないんですが、平成23年に生活保護受給者の(生活保護費) 大体、平均が、月額14万円で、年間で約170万。こう考えると、刑務所で300万って、約2倍の公費としてかかっている。でも、その300万にかかる中では、コンビニで、おにぎり一つ100円相当の部分を、盗んで捕まった場合にも300万かかるということでは、実際にそういう部分でかかってるんで、どうにかしようか、ということではあります。

こういったことを勉強している中で、堺の保護観察所の方が、地域の方を交えて一生懸命やってる取り組みをもっと広角的に広げていくんだったら、堺の少年鑑別所の中にある、大阪法務少年支援センターを貸して、勉強会っていうのを開催していけば、草の根的に広がっていくのではないかな、ということで、そこをお借りして、2・6・8・10・12と偶数月で勉強会を行っています。これっていうのは、その勉強会の中で、皆さんと、課題であったり、その時その時の起きた問題ごとを話し合って、どういった形で地域の方に、一緒に共有していって、1人でも多くの方を救えるんじゃないかなということで、勉強をずっと重ねてまいりました。
そんな勉強会をしているんですが、このコロナ禍の昨今、コロナの影響で、ここ3・4年はできてない状態でありますが、年に1回程度であるんですがオンラインの中で研修会を行っています。

先ほどお話したように、主な参加者は、司法の方であったり、鑑別所の中にいる地域非行防止調整官、保護観察、行政関係の方、福祉サービス事業者、今日ここに来ている何名かの方が、鑑別所の勉強会にも参加してくれています。就ぽつ(注:障害者就業・生活支援センター)であったり、支援学校の先生、企業。いろいろな方が賛同してもらって、入口支援や出口支援などの調整を密な関係を築きあって、地域生活が送れるようにと、勉強を重ねております。

また、勉強会をしている中でも、やっぱり、いろんな部分で勉強していくのに、スキルを養っていかなあかんということで、専門的な方であったり、大阪地域定着支援センターの相談員さんに、触法のことでお話してもらったりとか、入口支援・出口支援とはこういうものであるよっていうことで、いろいろご教授いただいてました。

ちなみに、入口支援・出口支援ということで、ここに来ている会場の皆さん、入口支援って、わかる方いらっしゃいますかね。まあ、出口支援だったら、当然、出口なんで出て行ってからっていうところになるのですが、「出口」は、矯正施設を退所した方、「入口」って言ったら、被疑者の方で、裁かれる前ですね、裁判前の方を「入口」と言われてます。

この絵もそうなんですが、勉強会の様子を映させてもらいます。

-今まで受け入れた触法障がい者の犯罪歴-

ここからなんですが、弊社が今までに受け入れた方の、犯罪歴、初犯の方であったり。また15犯以上の方、いわゆる、累犯されてる方であったり、障害のない方、健常者、いわゆる普通に罪を犯した方であったり。主な犯罪の中では、常習窃盗、詐欺、傷害、強盗傷害、傷害致死、放火、強姦、覚せい剤の常習であったり、建造物侵入、様々な方が罪を犯して、弊社の方では、こういった方たちがいらっしゃいます。

後で冊子の中にも出てくるんですが、詐欺って言うと、オレオレ詐欺とかいうイメージが多いかなと思うんですが、無銭飲食であったり無賃乗車って言われる方を、詐欺の扱いの中に入れております。

障害種別で言いますと、知的障害であったり、発達障害、精神障害、アルコール障害、ADHDの方。

生育歴で言いますと、幼少期からのDVであったり、施設退所者であったり、生活困窮者、引きこもり、愛着障害。また、障害手帳は持っているが、全く福祉に縁がなかった、つながらなかった方が多くいらっしゃいます。

-支援事例1 累犯障がい者 身寄りのない軽度知的障がい者-

相談依頼1って書いてるんですが、弊社の方で、身寄りのない、軽度の障害のある方の相談を受けました。事例発表っていう形になるのかな。

当初、就労移行で彼を受け入れましたが、その後、一般枠で雇用するという計画で、受け入れました。
その方は多重債務でした。携帯の複数社の(名義貸し)、お金を払ってない、いわゆる多重債務であったり、本人名義で借りている街金・金融であったりとかいう方で、生活困窮ビジネスの対象者でありました。

数年前になるんですかね、西成の方で生活困窮してる方たちを一つのアパートに、十数名入れて、生活保護受給であったり、障害年金を盗っていって、そこに住まわしている。そういうビジネスの対象者でありました。余談になるんですが、本人はものすごく、当初、居心地が良かった。毎月2万円のお小遣いをくれる。3食ご飯がついてる。で、仕事せんでゴロゴロしても怒られない、何という生活やというところで、約1年近くこの方は住んでたんですが、やっぱり自由が欲しいというか、ちょっと変やなっていうことがあって、外に出ようとするんですが、見張りの方がおって、なかなか出られなかった。でも、本人にしたら、ただで2万円もらって、ご飯も食べられてるし、ということで来たんですが、実際には、「あなたの生活保護費であったり、障害年金っていうの、全部、あなた、その人たちに取られてるんやろ?」って言ってるんですが、本人の中では全くわからない、っていう生活していました。

累犯障害者で、常習窃盗、車上荒らしを繰り返している方でした。最初にまずしたことって、受け入れた時に弊社も全く、福祉サービス等、こういった相談をどこに相談して持って行っていいのかわからなかったもので、まず役所に行かしてもらいました。役所で、「こういった方たちが、私のところにSOSで来てると、どうにかしたいんで─」っていうことだったんですが、役所の方は、「わからないんでそちらの方で対処してください」。そういうことがあって、地域生活定着支援センターっていうのは、当初、私知らなかったんですがインターネットで調べて、そういったところで弁護士の先生が居てて、無料で関わってもらえるよ、っていうことがあったんで相談しました。

その後、各携帯の会社の方に返済方法なんかを提案していって、弊社の方の、私、営利(株式会社い志乃商会)の代表もしてるんで、法人で、保証人となって返済していきますと。本人は、今後も許可すると、お金の部分であったり、携帯の部分であるんで、そこはイヤと言うことなんで、じゃあ、返済しようかっていうことで全3社あったんですが、5年で完済させてもらいました。

その後、会社の近隣に住んでもらうようになって、金銭管理を行いながら生活面もサポートしていくわけなんです。もちろん、カンファレンスを定期的に行い、関わる人たち、行政機関の思いの部分を共有して。その後、就労移行で当初受けたんですが、その方は、A型で働きたいということで、A型の方で、働くようになりました。まあA型で、それなりに金額もあったんで、生活レベルもちょっと上がって、それなりの生活できるようになってきたということで、預金もできてきたわけなんです。が、この方の特性もあるんで、定期的に居なくなります。相談することがない、相談するっていうか、できないって言うんですかね。困ったところになると、逃げてしまうのが早いということで、突然居なくなって。この方に関しては、今現在、10数年─10年ぐらい関わってるんですが、3回飛びました。飛んで、また保護願いを出して、また電話があって、本人から、帰りたいから助けてくれ、お金送ってください、というまあ繰り返しで、現在に至っております。

この方も、年齢でだんだんやっぱり課題部分が出てきまして。加齢の問題であって、仕事をしていく中では、やっぱり、作業ミスが増えるようになる、注意を受ける、心的ストレス、お腹が痛くなり、トイレにずーっと入って出てこない、また注意をされる、メンタル低下になって、帰っても寝れない、薬を飲んでも効かない、朝はだらだらだらだら起きてきて、出勤するわけです。また、当然だらだらしてるんで、作業ミスをしっかり注意をされる。この繰り返しというところで、やっぱり、定期的に居なくなっている。

そこで、信頼を持てる方に相談することをしていこうって言ってるんですが、なかなか本人的には、やっぱり難しくて、我々が思っているようにはいきません。

ちょっと、(スライドの)下の方に、今の目標、時給は1000円超えを目指していまして、とあるんですが、この資料が古かったもんで、ちょっと最低賃金も992円になってるんですが、今は変わってます。

この方に関してはやっぱりそういった部分の障害特性もあり、ヘルパーさんも入ってもらったりするんですが、なかなか改善されないんで、訪問看護さんに介入してもらえることになりました。訪問看護さんは、看護師の目線で、本人に寄り添っていってくれるわけで、お部屋に入っていく中で、生活面の態度であったりとか、その辺はやっぱり指摘していって、体の部分を整えていこうな、っていうことでするようになっていって、初めはなかなか時間かかったんですが、徐々に心も開いてくれて、通勤・通所もできるようになって、見違えるようにはなってきました。

-支援事例2高齢の累犯障がい者-

相談事例 2っていう形になるんですが、この方は、地域定着支援センターさんの相談によって受け入れました。男性の方になるんですが、元々はクリーニング屋で、本人働いていたというところで、弊社がクリーニングのお仕事をしてるんで、どうですかということで受け入れました。課題としては、アルコール依存であったり、コミュニケーションが取りにくい、若干難聴で言ってることもわからない。加齢の影響もあって、年々体力が無くなって持続性にも欠けてくる。腰や足が痛いということで、長時間の仕事が難しい、ということで、本人はB型の方に行きたいということで、就Bの方に行ってます。

この方も同じで、いろんな部分に課題あるんですが、各関係機関の人と一緒に関わり持ってやっていく中で、生活部分も見違えるぐらいになって、窃盗も収まってきたんですが、やっぱり、魔が差す言うんでしょうかね、またやってしまいました。

その時は、ちょうど私が朝仕事をしている時に、会社の前にパトカーが止まって本人が警察と一緒に、手錠をはめられて来られました。で、「この方、お宅の利用者ですか」、「無賃乗車です」ということであったんですが、本人の中では─大阪市に暮らしてまして、地下鉄はタダなんで、電車はタダやと思ってる感じで、阪堺電車に乗って、堺の方の、弊社の方の事業所まで来るわけなんですが。もちろん、地下鉄じゃないんで、ダメなんですが。本人の中では、まあ手帳を出して、フリーパスみたいな感じで来てるんですが、再三やっぱり、職員の方に、これは乗れないよ、と言われてるんですが、やっぱり障害ゆえの難しいところもあって、理解ができず、で、今回はダメよ、今回は行ける、次はダメよと言われまして、やっぱり重なっていくんで、阪堺電車の方も、障害があってもさすがにね、ということだったんで、どうにかならんかっていうことで相談があって、警察の方に行くようになりました。

その方なんですが、まあ、なんかまた乗ってきた場合は弊社の方に連絡くださいということで、乗ってきたらすぐお金を払いますということで、駅員さんの方から、また乗ってきましたよ、ということで、後々でお金を払いに行って、どうにかこうにか、そういう形では許してもらってて、本人は全然わかってないんですが、その辺も致し方ないのかなと思ったり。で、在宅起訴され、その後、また窃盗を繰り返していったわけなんで、在宅起訴、入り口支援ということで、裁判、環境調整でやって、起訴猶予っていうところでありまして、弊社の方にまた通所するわけなんですが。

高齢者施設に入っているんですが、そういった累犯の方を理解してもらってもらえるような施設はないかということで、弊社の作業所から数分の立地条件、近いというところで、頼んで、そこで受けてもらえるようになりました。加齢に伴う認知のことや、体調のことなど、日々共有できて関わっていくんで、お酒の匂いがしたら、また連絡があったり、血圧が高かったら電話かかったりと、密な連携を取ることで、お互い顔の見えるような支援が構築できたことによって、地域の中で生活できるということで。

この方、高齢の方なんですが、そういった障害特性と罪を繰り返す障害者というところで、NHKのバリバラの方の取材が来まして。彼に対して、密着っていうところで、数年間関わりを持ってもらいました。できる仕事の中って言ったら限られるんですが、でも、彼の居場所として、働けるところというところでは、彼の中で、働きたいというニーズもあるんで、毎日毎日、特性もあるんですが頑張って通所していってもらってます。これはバリバラの様子なんです。

-更生保護から地域福祉支援へ-

そういった彼も含め、他の方も、いろいろ部分で、特性もあり、再犯することもあるんですが、日中居れるところ、働くところですよね。右の図になるんですが、日中の場所があって、働けるところ、まあここでは、就労継続支援B型になってるんですが、福祉サービスを利用していって、生活の場、例えば、「暮らし」であると、ヘルパー入れたり、いろんな支援を入れることで、 更生保護施設に入らなくても、十分、地域で生活できるよ、みたいな形ではやっていければ、弊社のような部分で、生活ができていくのではないかと思います。

ここでは、弊社の方のグループホームになるんですが、全員、触法の、罪を犯した方たちが、四人暮らしております。

この女性は、先ほどお話した高齢の方になるんですが、働いてる方の約7割が、そういった、罪を犯した障害者の方と一緒に今働いてるわけなんですが、なんら普通で、全く変わりはありません。

-罪名ではなく、その前後関係に注目を-

ただ、このガイドブックにもお話してるんですが、まず一番初めに、罪名にたぶん目が行くかなと思うんですが、必ず「前後(関係)」があります。

窃盗って盗むことになるんですが、例えば傷害致死であったり、傷害罪、強盗傷害とか、凶悪犯罪と言われるところになるんですが、「前後(関係)」がありました。弊社の利用者さんもそうなんですが、コンビニでお金をパンを盗みました、当然店員は追いかけてきますよね。で、追いかけてきて、掴まれそうになるんで、本人は反射的にというか、手を払うとかするわけじゃないですか、で、店員さんがこけました、で、転けて怪我をするってなると、これはもう強盗傷害になるんですよ。

自供でも、合理的配慮というところで、どうなんかっていうのも、この後、皆さんとお話していこうかと思うんですが。例えば、障害をお持ちの方に、検察の方で聞き取りするわけなんですが、外国人の方、いわゆる日本語がカタコトしか喋れない方に関しては通訳が入ります。ただ、知的障害であったり、何らか障害持ってる方に関しては、取り調べ段階で変だなと思ってても、(注:通訳のような合理的配慮が)入りません。だから、例えば、コンビニで追いかけられた、で、触られそうってなって捕まりそうになった、僕は手を払っただけや、とそういう供述をしたらいいんですが、「突き飛ばしたな」って言われると、「いや、あの、そうですね」みたいなことになったら、そのままが自供になります。だから、これは、このまま自供として使われるんで、供述の中には、もう突き飛ばしたってなるんで、強盗傷害ってなるわけなんで、この辺の「前」って言うんですかね、前段階の部分も、障害特性の中で、何らかな合理的な配慮があれば、そういった、いわゆる、重犯罪にならんで済むのにな、というのは、常々思っております。

-楽しみのある生活-

弊社のグループホームの利用者さんなんですが、年に一辺、こういうふうに精一杯贅沢しようねということで、最高級まではないんですけど、ステーキのフルコースを食べに、年に1回2回行きます。そこで、贅沢していくっていうか、あなたたちが一生懸命働いたお金の中であったり、まあ、大きい声で言えないんですが、保護費で貯めたお金なんかを、ちょっと、こういった部分に使って、今までやったことないような生活を積み重ねながら、また、それを楽しみにしていって、次に生かしていこうねっていうことで、余暇活動の中で、こういう部分を繰り返しております。

-石野氏 まとめ-

常々、利用者さんが、言葉にしてよく言うことがあります。

「自分は定着センターと繋がって良かった」弊社は、「定着」からの依頼が多いんで、まあ、定着センターと繋がって良かった。
「相談する人や関わる人がいてラッキーやった」、「福祉に繋がって良かった」、「もう犯罪はしない」、と笑顔で言ってくれてます。

そんな彼は、言ってても、出てきて5日目に再犯して捕まった彼なんですが、それまでは、毎日出てきて、5日間の間に、毎日空き巣を繰り返してた。でも、そんな彼が、ふと言ったことは「捕まってよかった」って、なんでって聞くと、「今があるから」ということは、良く言ってもらってます。

この「捕まって良かった」って、ものすごく重い言葉であるな、と私も思いました。

そんな感じで、いろんな形の活動を続けていますが、常々思うことは、それは、罪を繰り返す、障害のある方たちにとって暮らしやすい社会って何だろう。社会って、地域生活って、簡単なんだろうかなと思うと、やっぱり、障害持ってる方に関してはなかなか高いハードルだなと思っております。

身寄りも無く、居場所も無く、行くところも無く、働くことも無い、働け無い人たちが過ごしやすい場所が、刑務所となっています。この、負の連鎖を止めない限り、エンドレスで負の連鎖が回転することであるでしょう。

最後になりますが、再犯しないとか、させないっていうよりも、いつでも帰って来れる場所、自分の居場所があるっていうことが、大事だと思います。

すいません、ちょっと、時間のオーバーになりましたんで、ここで、はい、終わらせていただきます。

ご清聴ありがとうございました。

司会:宮﨑 充弘氏

-宮﨑氏 まとめ-

石野さんありがとうございました。どうでしたでしょうか。

最後にね、石野さんがまとめていただいた、再犯させないとか、しない・させないではなくて、居場所ってキーワードになると思いますし、この、罪に問われた障がい者の人たちが、更に居場所をなくしている状態になってる今の社会の問題。でも、それはなぜかと言ったら─窃盗をした方、障害者だけではなくて、窃盗した方っていう、ラベリングですよね。

それが社会から、更に彼らの居場所を無くしていってる。なので、こういうガイドブックを作らせてもらってるのは、もう一度、同じ人として考えた時にどうなんだろうか。たまたま、罪を犯してしまう、そのバックグラウンドに何があったのかっていうのは、障がいだけではなくて、私たちも紙一重で、誰だってそういう状況になるよね。その時に、私たちの戻る場所ってあった方がいいよね。そういったところも含めてですね、この後ですね、いろんな事例を元にですね、お話をさせていただけたらと思っております。

参考までに、日本の、この国の社会はですね、ご存知のように、平成29年5月に、基本計画で発信してるんです。何かというと平成30年から、平成で言ったら34年、令和4年までの5カ年計画です。そこに書いてある言葉、ちょっと読ませていただきますね。

「一人一人の命の重さは、障害の有無によっても少しも変わることがないという、当たり前の価値観を、国民全体で共有する、共生社会の実現を目指す」これは、そういうことを目指していこう、その中で、女性も、男性も、お年寄りも、若者も、次、「一度失敗を経験した方も」、これ「触法」の方なんです。障害や、難病のある方も、家庭や職場で、地域で、あらゆる場で、誰もが活躍できる社会の実現を目指す」というのを日本が世界に発信してます。

要は、「1億総活躍」の言葉ですよね。それの、基本となることです。

「一度失敗を経験した方」なんですよ。「罪に問われた方」とあえて書いてませんが、「一度失敗経験した方」ですね。

僕たち何回経験して失敗しました?人生の中で。いっぱいあると思うんですよ。で、彼らの一度の失敗は許されないのか?っていうのをもう1回考えてほしいなと思いますね。

僕らはどうやって自分の失敗をリカバリしました?

友達がおったり、家族があったり、いろんな人が、「もうええやん、頑張りや」って言ってくれたでしょ?いっぱいの失敗を。いや、そしたら平等じゃないですか。

もう、みんな一緒に、その失敗を、みんなで解決していこうよ、ね、何回失敗しても戻っておいで、と、言えるような場所をね、地域に作れたらなという思いでこのガイドブック、それから、この後ですね、小川さんや上野さんや小名さん、また、石野さん、お話していただきますので、期待していただけたらと思います。

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