保護司について一少年院を出た少年の事例から一

保護司

 保護司とは、犯罪や非行をして何らかの処分を受けた人の立ち直りを支える人のことです。犯罪や非行をした人の立ち直りを支える「更生保護」の活動には地域の支えが必要となります。保護司は、これらの人の再犯を防ぎ立ち直りを支える民間のボランティアです。

保護観察

 少年院や刑務所にいた人が社会の中で更生できるよう、保護観察官と保護司が協働して指導や支援を行うことです。
保護司は、立ち直ろうとする人と定期的に面談して生活状況を把握し、約束事(遵守事項)を守るように指導、本人や家族の相談支援と困りごとへの助言、自立した生活のためのさまざまな助言、就労や仕事の継続ができるよう情報提供や同行を行います。

生活環境の調整

 少年院や刑務所にいた人が出院出所後に地域での生活になじみ、スムーズに社会復帰できるように生活環境の調整もします。具体的には釈放後に住むところを調整したり、引き受けてくれる人と話し合いを行ったりして、受け入れ態勢を整えます。

保護司の若槻壽一さんからお聞きした事例を紹介します。

事例

 年齢:17歳 性別:男性
成育歴:幼少のころから家族との縁に恵まれず施設で生活する暮らしを続けていた。

概要

 性的な逸脱行動がしばしばみられ、同じ学校に通う男子生徒に性的な行為をしていた。それを注意した教師に暴力をふるい、虞犯少年として家庭裁判所に送致され、少年院送致となった。少年院を出た後はグループホームでしばらく生活し、現在は更生保護施設にいる。
 少年院を出た後、本人がどこで暮らしたいかという要望を基に生活環境調整を行います。住むところが決まったら、その地域にいる保護司が決まり、本人と会います。
 面談は概ね月2回程度します。初めて会うときは、どういう事情で今のような状況になったのかを尋ね、自分の想いを語ってもらいます。その後は、今の生活状況や今の想いを聴くようにします。少年の場合、しばらくすると来なくなることもあるので、会って話をする時はできるだけ少年の話や気持ちに耳を傾けるようにしています。話すのが苦手な人や心をなかなか開いてくれない人には、話しやすくなるようにこちらからも話をするようにしています。
 中には保護観察の期間が切れても、気がかりな人もいます。保護観察期間が切れた人の場合、本人や受け入れ施設に断られたら会うことはできませんが、承諾してくれれば保護司ではなく知人として会うことはできます。周りとうまくやれているだろうか、何か困りごとはないだろうかと話を聴いてあげたいと思うケースもあります。
 少年院にいた少年、刑務所にいた人、と言う話を聴くと、恐ろしい人ではないかと身構えてしまう人もいるでしょう。
 私は保護司を始めてから23年くらいになりますが、初めのうちは家族も危険なことがあるんじゃないかと心配していました。しかし、長年、保護司としていろいろな人と関わっていくうちにそのような不安は消えていきました。
 保護司としてお会いした人の中にはいろんな人がいました。アルコールや薬物の依存症の人もいますし、人を殺めた人もいます。今ではそのような人への恐れもなく、とにかくこれから立ち直ってほしい、社会の中でちゃんと生きていってほしいという想いで、その人たちの話を聴いています。

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