「触法障がい者って、どんな人? どうして福祉的支援が必要なの?」触法障害者の基本的知識(社会福祉士 小川 多雅之氏)

罪に問われた障がい者の再犯防止と孤立の予防のための勉強会 第1回 第2部①
講師:社会福祉士 小川 多雅之氏
司会:特定非営利活動法人 サポートグループほわほわの会 代表 宮﨑 充弘氏

現在、フリーの社会福祉士として触法障がい者の支援を行っておられる小川多雅之氏を講師にお招きし、触法障がい者について分かりやすく解説していただきました。 小川氏は、大阪市の野宿生活者の巡回相談員の活動後、地域生活定着支援センターの相談員として触法障がい者の支援活動に約10年間従事されておられました。

丸紅基金 助成金事業
主催:特定非営利活動法人 南大阪自立支援センター
共催:相談支援たにまち
   わわのわ福祉アカデミア
   福祉のやさしい日本語協会
   一般社団法人ダイアロゴス


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※読みやすいようにある程度調整しております。また、当日の会場、ZOOM参加者への案内などは割愛しております。

司会:宮﨑 充弘氏

それでは小川さん、マイクを使っていただけたと思うんですけどね。
だいたい1人で20分ぐらいになってますけど、全然前後して構いませんのでね。
では、お願いします。

講師:小川 多雅之氏
スライドを元に話を進められておりますので、スライドを確認しながら読まれることをお勧めいたします。

ー本日のテーマと自己紹介ー

はい、皆さんこんにちは。
社会福祉士の小川多雅之と言います。
よろしくお願いします。

今日は触法障がい者の概観というところで、触法障がい者とか、罪を犯した障がい者、法に触れた障がい者ということで語られますけども、どういう存在なのか、みたいなところをざっくりちょっとイメージできるような、お話ができたらなと思います。

僕の方で、この「加害者にさせないためにできること」っていうのでは、主に地域生活定着支援センターの役割みたいなところを書いたんですけど、ちょっとそこには、あんまり触れずにと言いますか、それはまた、このガイドブック見ていただけたらと思うんですけども、全体の話がよりちょっとイメージしやすくなるようなお話ができればなと思います。

で、自己紹介ですけども、僕は去年まで、その地域生活定着支援センター、先ほどの石野さんの話でもちょくちょく出てきましたけども、罪を犯した障がい者とか、高齢者の支援を行う、主に福祉的なコーディネートを行う機関で相談員として働いてました。
その関係で、パンフレットにもその部分を書かせていただいたんですけども。

昨年12月で退職して、今はフリーランスの社会福祉士でご飯を食べられない日々を送っております。石野さんのところでも、非常勤の職員として一部働いてたりとか、他の罪を犯した障がい者を受け入れてる事業所でも、ちょっと所属してたりとかしております。
よろしくお願いします。

ー「触法障がい者」という言葉ー

ということで、触法障がい者っていう言葉、この分野に携わってる方は、皆さん聞きなじみのある言葉ではあるんですけども、結構この言葉って、実は曖昧な使われ方をしてるなというところで、ちょっと文言の整理です。

まず、触法障がい者という言葉は、僕の調べた限りですけども辞書には載ってません。触法っていう言葉と、障がい者と分けたら載ってるんですけども。ということで、辞書では定義がない。で、単純に法に触れた障がい者っていう意味で使われてますけども、これ別に、行政上触法障がい者というカテゴリーがあって、概念があるとか具体的にそういう存在があるわけではなくて、言葉として使われてるものなんですね。単に、まあ過去に法に触れたことがあるとか、今は、法に触れるような課題を持っている障がい者の方を指しているということですね。

で、ただ、支援の開始時に刑事司法、犯罪とかに関わってたり、触法行為が課題であったとしても、あんまりちょっと個人に対して触法障がい者っていうレッテル、貼ってしまうのは、ちょっと危険かなというふうに思っています。
というのも、例えば、犯罪を犯しました、で、刑務所に入ってきました。刑務所出てきて支援してると、まあ、触法障がい者の支援をしてる、みたいな感じで言うんですけども、その方は一応、法的責任はもう果たしてるんですよね。
でもまあ、やっぱり、触法行為の課題、窃盗が止まないとか、覚醒剤ちょっと使いそうなリスクあるとか、いろいろ触法の課題残ってたとしても、一応、法的責任は果たしていて、その方をいつまでも触法、触法って言ってしまうのはある意味、ちょっと、差別的になってしまうっていうようなところがあります。

じゃあなんで、この触法障がい者っていう言葉を使うのかというと、やっぱり、ある一定の属性を持った人を言葉で定義した時に、その方々を取り扱いやすくなりますよね。可視化できると言いますか。まあ、何でもそうなんですよ。
だけど、その言葉であんまり切り分けすぎると差別になっちゃう、っていうちょっと葛藤があるんですけども。
ま、そういう意味で、一応、触法障がい者という言葉を使っています。ということで、なんとなく言葉のイメージでした。

ー罪を犯した人の中に福祉の支援が必要な人がいるー

元々、この罪を犯す障がい者というところに、視点・焦点が当たってなかったというか、気づかれてなかった人たちだったんですよね。で、注目されるきっかけがありました。
この山本譲二さんという方、右下の写真の方ですけども、この方が旧民主党の議員さんだった時に秘書給与詐欺事件ということで、実刑判決を受けて、投獄という言葉が適切かわかりませんけど、刑務所入ることになったんですね。
で、刑務所では、刑務をするところなんです。刑務っていうのは、刑務作業、刑罰としての作業、仕事をする場所、というところで、刑罰を受けた人っていうのは、何らかの、皆さん作業するんです。禁固刑の方は別ですけどね。仕事をする義務はなくて、閉じ込められるだけなんですけども。

刑務作業というのと、刑務所の中にも、実は、たくさん工場と呼ばれるところがたくさんあって、本当に、いろんなことやってます。木工から内職作業から。堺 ( 注釈:大阪刑務所 ) では、織物なんか編んだりとか本当にあらゆる作業があるんですけども。

その中で、この山本譲二さんという方が当てられた作業が、同じ受刑者の介護、お世話をする係だったんです。で、刑務所入ってみたら、実は、認知症のおじいちゃんとか、精神疾患があってブツブツ言ってるような人とか、今、自分が刑務所に入ってることすらちゃんと認識できてないんじゃないかなっていうような、知的障がい者の方がいらっしゃって。で、特にね、高齢者でオムツしてたりとか、漏れてしまったらおむつ交換したりとか、本当にそんな介助みたいな仕事をするように当てられてしまった。

で、この山本譲司さんが、びっくりして、出所した時にこの刑務所での体験記を「獄窓記」という本に書いて。
で、出版したらこれがすごく注目されたんですね。注目されたと同時に、福祉業界の人は、ちょっとびっくりして、反省したと言いますか。本来は、福祉関係が、福祉の制度が、いろんなセーフティーネットってなるべきところが、その網をすり抜けて、結局、刑務所に入ってしまっているんだなっていうところがわかって、ちょっと福祉関係者は反省した、というようなところがありました。

また興味がある方、読んでいただいたらと思うんですけども。

これちょっと、その、刑務所がセーフティーネットと言われてもピンと来ないと思うんですけども。その一例と言いますか、さっきの本の出版が2003年ですけど、これ(次のスライド)2006年ですね。
下関駅放火事件というのがありました。当時、男性74歳、高齢ですね。
2006年1月7日の未明、下関駅に放火して焼失させた。駅舎が全焼しました。
被害額は5億円以上で懲役10年の判決を受けました。
判決は「軽度知的障がいでかつ、高齢でありながら、刑務所を出所後、格別の支援を受けることもなかった」ということを、判決・指摘されました。

結局どうしようってなって下関駅に行って、野宿するかみたいな感じで行ったんですけども、寒かったっていうのもあったらしいんですけどもね。警察官にも、駅舎からもう出て行きなさいと言われて。で、その末に放火をしてしまったと。で、この方が、犯行の動機語ったという時に、「刑務所に戻りたかったから」と述べたと。

出所して、警察に接触したり、福祉事務所行っても、どこもサポート受けられなかった。だから、もう刑務所に戻るしかないと。先ほど石野さんの話も、刑務所だったら3食ご飯があって、生活でき、屋根があって、っていうところで、不自由なんだけども生きていけるという。
だから、この人にとって、やっぱり社会ではしんどいところで、刑務所がセーフティネット、最後の安全のネットになっていたと。(刑務所が)なかったらね、外で餓死しちゃうとか、凍死しちゃうとかいうことあったと思います、季節的にも。
ということでした。

こういう、先ほどの山本譲司さんの「獄窓記」っていうところから、刑務所の中に福祉的支援の必要な人がいるっていうことが注目されまして。2006年にも、この象徴的な事件が起きたっていうところで、この頃に、厚生労働科学研究「罪を犯した障がい者の地域生活支援に関する研究」という研究がされました。

実際、刑務所の中に、どれぐらい障がいのある方がいるのかなっていうのが、調査が行われたりしました。で、やっぱり、一定、たくさんいるし、支援を受け入れてなくて、刑務所に何回も入ってる人がいるぞ、ということがわかってきて、徐々に福祉的な制度が、刑事司法の中にも整ってきました。

例えば、2007年に、刑務所に社会福祉士さんが配置されるようになりました。2009年には、まず、地域生活定着支援センターというのが設置され、保護観察所には、その担当官、調整を担当する担当官が配置され、で、指定更生保護施設、出所したところ行き場のない人が一時的に入って、仕事しながらお金を貯める施設があるんですけども、(指定)更生保護施設というところにも福祉スタッフの配置が開始されてということで、徐々に制度が整ってきたという状況です。

ー刑務所の中にいる障がい者についてー

じゃあ実際、刑務所にはどれぐらい障がい者の方がいるのか。これは、ストレートに障がい者の統計というのが中々無いんですけども。矯正統計年報とか、たまに犯罪白書とかそういったところで数字が出てたりはします。障がいをどこで線引くかというのも難しかったりするんですけども。
まず2021年、これが、2022年度の矯正統計年報ってまだ出てなくてですね、2021年の新入受刑者の精神診断。
新入ってのは、その年に入った受刑者ですね。
まず、日本全体で、刑務所に入った人が1万6,152人いましたと。2021年には。
その中で知的障がいの方297人。
で、人格障がい66、神経症性障がいとかその他の精神障がいとか不詳とか色々ありますけども。

上記統計によると、障がい者、この全体で行くと、この、「精神障がいなし」以外の人の割合はだいたい15%ぐらいで、知的障がい者は約1.8%ということになります。
次に、これは、刑務所が認定した障がい者ってことですね。

もう一つちょっと指標になる数値がありまして、新入受刑者の能力検査値というのがあります。
先ほど、刑務所では、刑務作業をするところだっていうのを言いましたけども、刑務作業を、いろんな種類ある中で割り振るにあたって能力テストを行うんです。
CAPAS(キャパス)というテストですけども。
そのキャパスで、概ねのIQ値が出るわけですね。
正式な、WAIS(ウェイス)とかそういったもののような精度はないんですけども。

キャパスというものを使って、IQの検査をしたら、一般にはね、IQって70未満が知的障がいの領域になると。
それだけで知的障がいを認定するわけではないですけど、70未満が知的障がいの領域にあるということで。
この70未満の数字を、この表を見たらちょっとパッと見にくいですけども、計算すると、だいたいまあ、70未満の方が約20%いると。
もし、でも、IQが100が平均だと言われてますけど、100というなら、99未満の人がほとんどで、100以上の人ってすごく少ないんですよね。それだけ見ても、やっぱり、ちょっと「生きづらい人」が刑務所に入ってしまってるんじゃないかなってことが、ちょっと感じ取れるわけです。
正確性に欠くね、情報とはいえですけどね。

で、ちょっと、障がい者数とIQ相当値70以下の数の乖離ということで、先ほど刑務所で知的障がいありと認定されているのは297名でしたと。だけど、能力検査値でIQ70未満は3273名。テスト不能の人を除いてですから、なんか、すごく差ありますよね、えっていう感じがするんですけど。療育手帳とか所持してれば、刑務所は必ず知的障がい者として認定されるでしょうし、医師が軽度知的障がいとか、知的障がいの診断をしていれば、知的障がいとして扱われるはずでしょうけども。

まぁ、刑務所の能力検査ってのはそのまま鵜呑みにできない、モチベーションが低い状態でテストやったとか、加齢とか高齢であったりとか、精神疾患によって数値が低下してるみたいなとこも、差し引いたとしても、この①の数字と②の数字がすごく乖離してるというのは、ある意味、だから、能力的に、息苦しい、ちょっとしんどいなっていうような人が、知的障がいと認定されることなく生きてきたっていうことじゃないかなっていうのが、なんとなく伺えるんじゃないかなと思います。はい。
本当は、支援が必要な人がもっとたくさんいたんじゃないかな。
で、まあ、必要な人に、要は福祉が届いてないということだろうという風に、ちょっと、僕は感じるんです。はい。

ちなみに知的障がい者の方の罪名内訳ですけども、2021年の新入受刑者で、知的障がいがあると認められた297名、内、女性16名です。
刑務所って、もうほとんど男性の、男性ばっかりなんですよね、受刑者って。刑務所の数も、女性刑務所ってごく一部で。
なので、この障がいのある方の割合でもすごい差があります。

主たる罪名で行くと、1位が窃盗。154名ですね。もう51.8%、半分を占めるわけです。
2位が詐欺。
先ほどね、石野さんおっしゃったように、詐欺と言っても無賃乗車、無銭飲食も含まれると。最近では、割と、オレオレ詐欺の受け子に使われたとかもありますけどね。
あとは3位、覚醒剤取締法違反が16名。
また、4位以降、道交法違反、強制わいせつ、傷害、強制性交、暴行、中には殺人とかもあったりします。

これを見ると、6割ぐらいがもう、財産犯ということですね。
お金を取ったか、お金を騙し取ろうとしたか、ものを盗んだか、みたいなそんな感じですよね。ちょっとこのデータでは、その窃盗でもやっぱりね、おにぎり盗むのと、なんかすごい車盗むんでは罪の大きさも違うと思うんですけど。その、ちょっと程度の差まではわからないんですけども。
で、お金を盗むっていうことは、やっぱりその、何らかお金に困ってたんじゃないか。 で、あるいは生活保護とか受けてたとしても、お金を上手に使えなかったんじゃないか、っていうようなことが感じられます。

だいたい、僕も、定着支援センターとかで仕事してきて感じるのは、だいたい生きづらさがあるから犯罪を犯してるなっていうのは、さっきの知的障がいの数字でもそうですけども、生きづらさをなくしたら罪を犯さなかった人も、たくさんいるよなというふうにも感じてます。

で、生きづらさ、じゃあ解消していくっていうのは何の役割か、といったら、やっぱり福祉の仕事ですもんね。
皆さん、福祉関係の方、多いと思いますけど。
福祉の関係の方って、生きづらさの解消をすることで、社会でうまく生活していけるようにサポートしてるっていう部分は大きいと思いますけれども。

と思うと、やっぱり犯罪を犯したとか、警察に捕まったとか、刑務所に入ったっていうと、なんとなく福祉職として自分とは関係ない、みたいな感じで思ってしまうようなところもあるかと思うんですけど、全然そんなことないんじゃないかなというふうに思います。で、問題行動とか、社会不適応行為っていうのは、もしかしたら、それは生きづらさの表れかもしれないなという視点を持って、捉えてみるのも必要かなっていうふうに思います。

僕も実際、地域生活定着支援センターとかの仕事をするようになって、ニュース見る見方がずいぶん変わりました。
ニュース見ると、やっぱり、その、加害者を擁護するような報道ってどうしてもしにくいっていうところがあって、加害者側ってすごい悪い人、ろくでもない人、っていう人に見えるんですけど、もしかしたら、報道されてないだけで、その人もかなり生き辛さを持ってたんじゃないかなっていうのは、想像が、ちょっとしてみるようになってきました。
実際、その、福祉的支援がね、再犯の防止につながるのかなとか、犯罪減らすことができるのかな、っていうようなところで思うんですけども。

ー福祉的支援の必要性ー

平成30年に法務総合研究所が実施した、障がいのある受刑者の支援の状況や再犯の実態等についての調査結果っていうのがあります。
これによると、特別調整の対象者は、再犯なしが9割である一方、特別調整、特別調整ってごめんなさい、説明が要りますね。
刑務所から出てくる人に対して、地域生活定着支援センターが関わって、福祉サービスとか受け入れ先施設とか、ちゃんとサポート受けられるようにコーディネートする仕組みのことなんですね。

で、その特別調整をした人の中では、9割が再犯しなかった。
だけども、「特別調整受けないか」っていうことを刑務所から提案されて、要は刑務所から見たら、「この人、支援が必要だろう」と判断された人の中で、辞退した人は、やっぱり、刑務所にもう1回入ってしまったっていうのが、4割ぐらい入っちゃってるというような状況がある。これは、ちょっと、平成26年2月1日から3月14日までの間に刑務所から出所した人で、なおかつ、平成27年5月末までに刑務所にまた入っちゃってるかどうか、っていう、ちょっと、言葉だけで言うとややこしいんですけども。

これを見ると、やっぱりその、地域生活定着支援センターが関わって、ちゃんと福祉のサポートにつなげた方は、それを辞退したよりも、もう明らかに、犯罪はしなくなってる。少なくとも、犯罪をしているかもしれないけども、刑務所に入るというような事態までは、だいぶ避けられてるんじゃないかなっていうことで。

それを考えると、刑務所に入ってから支援というよりも、最初からちゃんと困ってる人とか、生きづらい人に支援が届いていれば、刑務所にそもそも行く必要がなかった人なんじゃないかな、っていう、そういう人も多いんじゃないかな、っていうのが感じられるんです。はい。

僕が思うんですけど、この依存症、薬物依存症とかアルコール依存症とかいうのがありますけども。
依存症には「自己治療仮説」っていうのがあるんですね。
ちょっと話飛んだように思うかもしれませんけど。
人が物質や行動に依存するのは、依存性のある物質や行動、性格や根性の問題ではなくて、たまたま出会った物質や行動によって辛い気分や困難な状況が和らいだ経験をしたために、それを繰り返し、次第にその物質や行動に依存していくという考え方。
要は、そもそも、結構つらい思いをしてる、苦しさを持ってるって人が、たまたま薬物とか、なんかに出会っちゃった。それを使ったらすごくそれが解消された、で、楽になった、心が、っていうところで、はまってしまう、みたいなところですよね。
これは、結構昔から言われてるところで、だから、まあね、自分の快楽のために、お酒めちゃくちゃ飲んでとか、悪い薬に手を出して、っていうよりも、そもそも前提に苦しさがあったんじゃないかっていう考え方なんです。

この自己治療仮説ってのを知った時に、これ、触法障がい者の支援でも、やっぱそれに似たようなことを、僕、思ったんですよね。
犯罪っていうのも、もしかしたら自分の足りないもの満たすためとか、しんどさとかを解消するためとか、他に適切な方法が思いつかない時に、自己治療じゃないですけど、自己解決の手段として、犯罪してしまったのかなっていうのを、感じる人はすごく多いです。
で、それを1回覚えて、1回でも、例えば、窃盗してうまくいったら、成功体験として残っちゃうと。成功体験として残ったら、それを繰り返して、結局、でも、うまく最後までやり仰せないから、いつかは捕まっちゃう。という感じで。

っていうことで、なんか、犯罪をしたら、「悪い奴」っていう視点で見るんじゃなくて、ひょっとしたら、この人、しんどい人なんかもしれないなっていう見方に転換するっていうのはすごく大事かなっていうふうに思います。
で、まぁ、最後ちょっと付け足したような話ですけど。

で、関わってきて、これまで支援してきた人に共通して足りなかったのは、まず、安心できる居場所。
これも、石野さんの話とも同じですけども。
居場所がなかったり、もしくは自分の力を発揮できる場所・出番がなかったと。
仕事とかもそうですよね。
これは自己肯定感にもすごく影響するとこだと思いますし。
あと、信頼できる人とのつながりもなかった。
こういうのが、もうほとんどない人が、刑務所に入ってるような印象を持ちました。
これも統計を取っているわけではないですけども。
この仕事、こういう触法障がい者に関わってる人、皆さん仰るようなことですね。

ということで、逆を言うと、この辺をサポートできれば、このガイドブックのタイトルにある、「加害者にさせないためにできること」っていうのは、この3つを整えることが大きいんじゃないかなっていう。

犯罪って聞くと、なんか、それに伴った、特別な知識とか、プログラムが必要な感じがするんですけども。
いや、ほとんど、この3つで解決できる人は多いな、っていう印象があります。
まあ、中には高度な犯罪をして、難しい関わり、性犯とかね、 いろいろあったりはしますけども。これでかなりのリスクは下がる、という風に感じています。はい。

ー刑事手続きの流れー

ちょっと最後付け足しですけども、刑事手続きの流れということで、今、話は、ほぼ刑務所から出てくる人を念頭にしゃべりましたけど、刑務所って、実は入るの簡単じゃないんですよ。
まず事件を起こしました。
逮捕されて警察に勾留されます。
で、警察からまた、検察に送検、送られて、検察でも取り調べを受けます。
で、検察は何するかと言ったら、この人、裁判にかけるべきかかけるべきじゃないか、っていうことを判断します。裁判にかけるのを起訴と言いますけども。
で、起訴したら裁判になって、本人は拘置所に移送されるんですけども。
で、裁判かけられて、最後、実刑を受けたら、刑務所行くわけですけども。

実は、全部、逮捕された件数のうち、刑務所にまで行ってしまうのって、たった2%らしいんですよ。
っていう風に思うと、刑務所から出てくる人だけサポートしても全然不十分で、警察から、まあ、もう警察沙汰になった人、検察からも不起訴、起訴されなくて釈放された人で、裁判で実刑にならなくて執行猶予とかで釈放された人にも、ちゃんと福祉が届いてサポートすれば、かなり多くの人をカバーできるんじゃないかな、というところで、最後にこの図をつけました。
ちょっと、分かりやすい図かどうか分かりませんけど。

ちなみに、ちょっと、入口支援っていうのは、この、刑務所に入る前段階で、なんとかサポートするのを入口支援、刑務所から出る段階でサポートするのを出口支援という、これも、この世界で使われている用語で、一般的にあんまり使われないんで、あれですけど、書いてますので、はい。
何となくこういうイメージを持ってもらえたらなと思います。

すいません、ちょっと僕、話長くなったかもしれませんけども、ざっくり触法障がい者という人たちがどんな人たちか、イメージ持てるようなお話ができてたらいいかと思いますけども。

ありがとうございました。

司会:宮﨑 充弘氏

はい、ありがとうございます。小川さんありがとうございました。

はじめにね、生きにくさ・生きづらさっていうところにもね、つなげていただいて、今の現状なんかも話していただきましたが。

この表を見ていただくと分かりやすいなということと、福祉の関わるポイントなんかの課題もね、少しお話しいただけたかなと思います。

過去の、皆さんも記憶にある事件なんかも出していただきながら思いました。
あの時にどう思ったんでしょうね、ってことですよね。
確かに思いましたよね。
そこから我々は何をしてきたのかなってことなんですよね。
なので、これを機会に、私たちができることって何なんだろうか、ってところ、もう少し思い馳せていただけたらなと思っております。

小川さん、もう一度拍手、お疲れ様でした。

ありがとうございます。

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